松本ハウスの書籍「統合失調症がやってきた」の内容が先行公開中

松本ハウスの書籍「統合失調症がやってきた」が8月7日に発売されます。
それに先だって、本書の内容の一部が公開されました。

あー、これはもう、買うしかないですよ。

●ギリギリ芸人の綱渡り

その後もぼくは、間違いを犯し続けた。
 気分によって、自分で飲む薬の量を増やしたり、減らしたり。薬を減らして調子を崩した時よりも、普通にやれた時の印象のほうが強く残る。そして、今日は具合がいいから一回で、今日はちょっとしんどいから多めに飲んでおこう、とやってしまう。そんな滅茶苦茶な服薬の仕方では、当然、具合が不安定になる。

 でもぼくは、どんなに具合が悪くても、仕事に支障をきたすことだけはしたくなかった。家でどんよりしていても、仕事の現場に入ったら、いくらだって頑張った。

「芸人として、ちゃんとしていなくては」
 そう自分に言い聞かせ、お客さんの前では明るく笑った。キックさんや芸人仲間に、落ちている姿を見せないようにした。誰にも気づかれたくなかった。具合の悪さを気づかれたならば、また不安と焦燥と孤独の闇に引きずり戻されてしまうから。

 ぼくにとって「芸人」という職業は、初めて見つけた「居場所」だった。やっと手に入れた居場所を、ぼくは失いたくなかった。

 壊れたぼくでもありじゃないか。壊れているんだから、騙し騙しやっていくしかない。「舞台は最高、人生は最悪」みたいな言葉もあるじゃないか、と頑張った。
 芸風もギリギリと言われたが、シャレじゃなく、本当にギリギリの綱渡りをしていた。

ギリギリ芸人と言われていたハウス加賀谷さん。実際に自身もギリギリでした。

●「簡単なことはするな」

「簡単なことはするな それはつまらないから 俺もそれはしない」
 キックさんは分かっていたんだ。
 分かっていて何も言わなかったんだ。

「こんな体、壊してしまえ」と思っていたが、このままではキックさんを悲しませてしまう。申し訳ない。ぼくは何をしようとしてたんだ。そう思うと泣けてきた。泣いて、泣いて、体中の水分がなくなるほどぼくは泣いた。その涙は、明らかにそれまでとは違う涙だった。

 自殺という言葉を使わなかったのは、キックさんの優しさだ。
「自殺するのは、芸人として面白くない」
 キックさんは、そう言いたかったんだと思う。

 このFAXは、ぼくにとって、ものすごく大きかった。薬を過剰に飲んでしまうことは続いたが、これ以降、ぼくが自殺を図ることはなかった。

松本キックさんのFAXで自殺を思い留めたハウス加賀谷さん。

●幻のキックさんとスナイパー

荒唐無稽な世界がリアルに襲いかかってきた。
 南の窓に現れた幻は、キックさんやモンチではない。ライフルの銃口がぼくに向けられている。スナイパーだ。
「やばい!」
 反射的にのけぞり、壁に頭を強く打った。

 スナイパーは、ゴーグルをつけ、ライフルを構え、スコープを覗き込んでいる。『ゴルゴ13』に出てくるようなスナイパーに、ぼくは「殺される!」と思った。少しでも低くしないと撃ち殺される。四つん這いでも怖くなり、床にうつぶせた。部屋の中をほふく前進で移動し、息を殺して身をひそめた。

 玄関までスナイパーが来たのは、一度だけだったが、常に命を狙われているという恐怖はついて回った。事実なら警察に相談すべきところだが、ぼくにはその考えが浮かばなかった。
 仕事中は、スナイパーのことなど、すっかりというほど忘れていた。忘れているというか、ほとんど気にならなかった。

 どんなに具合が悪くても、仕事は一生懸命にやる。必要とされていると思えば、体は動く。住まいの部屋で這いつくばっていても、お客さんの前では笑顔になれた。

「か・が・や・で~す!」
 みんなが喜んでくれ、ぼくは再確認する。ぼくの「居場所」はまだここにある。

 ぼくは、芸人「ハウス加賀谷」であることに、強くこだわっていた。
 しかし、仕事が終わり帰宅すると、また独りでガタガタと震えていた。

ハウス加賀谷さんの幻覚の内容もリアルに語られます。

この本は統合失調症の当事者本の中でもトップクラスの売れる本になるはずです。
今から予約した本の到着が待ち遠しいです。

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統合失調症がやってきた
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